尖閣諸島(沖縄県石垣市)を日本領と記した19世紀後半の英国製とドイツ製の地図が新たに確認され、政府が対外発信に活用する方向で調整していることが12月15日、分かった。いずれも台湾との間に国境線が引かれ、明治28(1895)年に領土編入する以前から欧州では尖閣諸島が日本領であると認識していたことを示している。
地図は「スタンフォード地図店」(英国)が1887年に発行した「ロンドン・アトラス」と、ドイツ地図発行人のシュティーラー氏による1875年版の「ハンド・アトラス」。尖閣諸島の西側に領土・領海の境界を示す点線が引かれている。ロンドン・アトラスは豪州の国立図書館などに所蔵されているが、今回初めて現物が国内で確認されたとみられる。
尖閣諸島をめぐっては、明治政府が明治28年1月、10年間の調査により清国を含むどの国の支配も及んでいないと確認し、沖縄県への編入を閣議決定した。
中国側は、尖閣諸島(中国名・釣魚島)は28年4月に締結された日清戦争の講和条約「下関条約」で台湾とともに日本に割譲され、先の大戦の終戦に伴い、台湾とともに返還されたとする。英国やドイツの地図は、尖閣諸島が台湾の付属島だとする中国側の主張を覆すものだといえる。
海洋国家であった英国で発行されたロンドン・アトラスなどは、周辺国の情報を基に当時の領土関係を比較的正確に反映した地図だと評価されている。領土問題を調査研究する公益財団法人「日本国際問題研究所」の永瀬賢介研究調整部長は両地図について「日本編入を前に欧州は尖閣諸島を日本領だと認識していたことを示す貴重な地図だ」と評価した。尖閣史に詳しい長崎純心大の石井望准教授も「地図は東洋で得られた最新情報を反映している」と分析している。
両地図は、自民党の原田義昭元環境相の秘書、高田彌(わたる)氏が個人所有していた。高田氏は5年ほど前に英国の古地図店から購入したといい、地図を有効的に活用するため15日、日本国際問題研究所に寄贈した。内閣官房領土・主権対策企画調整室は同研究所から地図のレプリカの貸し出しを受け、尖閣諸島や竹島(島根県隠岐の島町)に関する資料を集めた「領土・主権展示館」(東京・霞が関)での展示やホームページへの掲載などを検討している。